宮本百合子 動かされないと云う事:赤坊が風車を廻されて驚き、舌出し三番(さんば)の舌を見て泣き出すと同じ等((ママ))な驚きをし泣き方をして居ます。 ほんとうに動かされたくない。 けれ共又そうかと云って、世の中のどんな事でも平気になって仕舞って、ニヤニヤ嘲笑いながら苦しんで居る者、育とうとして悩んで居る者を見下す自分を想像する事は尚たまりません。 そんななら寧ろどんなにでも動かされて苦しむ方がどれ程好いか分らない。「根のしっかりした草が風に吹かれる」様でありたいものです。 私は決してまるで動かない木偶(でく)の様な人間になる位なら死んだ方が増しだと云う程に感じて居るけれ共又、仕切((ママ))りなしに動かされて居る事は何だか不安でもあるのです。 動くにしても私は深さに動かされ度い。 足元が定まらない様に前後左右にフラフラとよろけて居る様な事を感じる事のあるのは真に情ない感じがしないでは居られません。 どうぞして、深みに動く人間になり度いものです。
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宮本百合子 動かされないと云う事